『機動戦艦ナデシコ』が、ついに放送30周年を迎えます。
1996年にTVアニメの放送が始まってから30年。
「もう30年も経ったの?」
当時リアルタイムで見ていた方ほど、ちょっと信じられない数字かもしれません。
私も当時『ナデシコ』を見ていた一人です。
明るくて、ちょっと騒がしいミスマル・ユリカ。
「バカばっか」でおなじみのホシノ・ルリ。
料理人を目指しているのに、なぜか戦いに巻き込まれていくテンカワ・アキト。
そして、妙に熱い劇中アニメ『ゲキ・ガンガー3』。
ロボットアニメなのにラブコメのようでもあり、ふざけていると思ったら突然シリアスになる。
そんな独特の雰囲気が魅力的な作品でした。
ところが――。
1998年に公開された劇場版『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』を見て、驚いた方も多かったのではないでしょうか。
「……ナデシコって、こんなに暗い作品だったっけ?」
私自身、劇場版のダークな雰囲気はとても好きでした。
ブラックサレナの格好よさも含め、TV版とはまったく違う魅力があります。
ただ、その一方で今でも引っかかっていることがあります。
それが、
「アキトは結局、幸せになれたの?」
ということです。
今回は30周年を迎え、再び動き始めた『機動戦艦ナデシコ』について、劇場版の思い出やアキトのその後、そして今だからこそ期待したい「続編」について振り返ってみたいと思います。
TV版とは別作品のようだった劇場版ナデシコ
TV版の『ナデシコ』にも、実は重いエピソードはたくさんありました。
戦争があり、人が亡くなり、アキト自身も火星で家族を失っています。
それでもユリカたちの明るさやラブコメ要素、そして『ゲキ・ガンガー3』のおかげで、作品全体にはどこか楽しい雰囲気がありました。
だからこそ、劇場版の変貌には驚かされました。
画面全体の雰囲気は暗くなり、音楽もストーリーもシリアス。
そして何より衝撃だったのが、
「アキト、どうしちゃったの……?」
ということでした。
TV版ではごく普通の青年だったアキトが、黒い機体「ブラックサレナ」に乗り、まるで別人のような姿で登場します。
しかもアキトとユリカはTV版の後に結婚していました。
本来なら、ようやく幸せな生活を送っているはずだった二人です。
ところが二人は事故死したと思われていた裏で拉致され、アキトはボソンジャンプに関する人体実験を受けていました。
その結果、アキトは五感に深刻な障害を負ってしまいます。
料理人を目指していたアキトにとって、特に味覚に障害が残ってしまったという設定は、あまりにも残酷でした。
単に「戦闘で負傷した主人公」というだけではありません。
アキトが望んでいた普通の人生そのものを奪われてしまったように感じられました。
なぜアキトとユリカは狙われたのでしょうか?
そもそも、なぜ二人はこれほど酷い目に遭わなければならなかったのでしょうか。
そこで重要になるのが「ボソンジャンプ」です。
アキトやユリカは、ボソンジャンプにおいて非常に重要な能力を持つ「A級ジャンパー」でした。
劇場版の敵「火星の後継者」は、ボソンジャンプ技術を掌握するためにA級ジャンパーを必要としていました。
つまりアキトは、単純に個人的な恨みから狙われたというわけではありません。
非常に価値の高い実験対象でもあったのです。
そしてユリカもまた、演算ユニットと人間をつなぐ重要な存在として利用されてしまいます。
TV版ではあれだけ明るかった二人が、その後こんなにも悲惨な運命に巻き込まれていたことを考えると、劇場版の重さが改めて分かります。
「ところでラピスって誰?」と思った方も多いのでは?
劇場版には、アキトと一緒に行動している謎の少女が登場します。
ラピス・ラズリです。
TVシリーズには登場していなかったため、初めて劇場版を見たとき、
「この女の子は誰なんだろう?」
と思った方もいたのではないでしょうか。
ラピスもまた人体実験に関係する被害者であり、アキトによって救出された少女です。
そして興味深いのが、その名前です。
ラピスラズリは日本語で「瑠璃」。
つまり、
ラピス・ラズリ=瑠璃=ルリ
という関係になっています。
ルリと同じように特殊な背景を持つ少女で、劇場版では身体に障害を抱えたアキトを支える重要な存在になっています。
ユリカが「アキトが帰る場所」だとすれば、ラピスは「現在の傷ついたアキトのそばにいる存在」。
そんな見方をすると、劇場版ラストの二人の姿も少し違って見えてきます。
ユリカを助けた。それでもアキトは帰りませんでした
劇場版におけるアキトの大きな目的は、ユリカを救い出すことでした。
そして北辰との戦いを経て、ついにユリカの救出に成功します。
普通のアニメであれば、
「アキト!」
「ユリカ!」
と再会して、そのまま感動のエンディングになってもおかしくありません。
ところが『ナデシコ』は、そうしませんでした。
アキトはユリカの前に戻らず、ラピスとともに去っていきます。
敵には勝ちました。
ユリカも助けました。
それなのに――
アキト自身は、まだ救われていません。
これこそが劇場版を見終わった後、何十年経っても心に引っかかっている最大の理由なのかもしれません。
ナデシコC、結局ほとんど戦っていない?
もう一つ、劇場版で印象に残っているのが「ナデシコC」です。
終盤に登場する新型ナデシコで、ルリがその能力を最大限に発揮できる非常に強力な艦です。
初めて見たときは、
「ついに新型ナデシコで最終決戦が始まる!」
と期待した方も多かったのではないでしょうか。
相転移砲で敵艦隊を撃破。
ディストーションフィールドで敵の集中砲火を防御。
そんな派手な艦隊戦を期待したくなります。
ところが――。
ナデシコCは、ほとんど武器を使いませんでした。
なぜならルリが電子戦によって敵のシステムを掌握してしまうからです。
考えてみれば、
「敵艦を一隻ずつ撃沈するより、システムそのものを制圧したほうが早い」
という、非常にナデシコらしい決着だったのかもしれません。
しかも1998年の作品で、このような電子戦をクライマックスに持ってきたのも面白いところです。
ただ、一人のファンとしては今でも思います。
ナデシコCが本気で戦うところも見たかった!
30周年で新型「ナデシコD」なんてどうでしょう?
ここからは完全にファンとしての願望です。
もし30周年で新作が作られるのであれば、新型ナデシコを見てみたいと思っています。
名前はシンプルに、
「ナデシコD」
でもいいのではないでしょうか。
敵艦隊から一斉射撃を受けるナデシコD。
しかし最新型のディストーションフィールドで完全防御。
敵が驚いているところへ、艦そのものがボソンジャンプ。
一瞬で敵艦隊の背後へ移動します。
そして強化された相転移砲。
さらにルリによる電子戦で敵の通信網まで完全掌握。
最後にルリが、
「……バカばっか」
なんて言ってくれたら、当時から見ていたファンとしてはたまりません。
ブラックサレナの後継機まで登場したら、さらに嬉しいところです。
これだけ続編を作れそうなのに、なぜ作られなかったのでしょうか?
改めて考えてみると、不思議です。
劇場版はどう考えても「その後」を作れそうな終わり方でした。
アキトは去ったまま。
ラピスも一緒です。
ユリカは救出されました。
ルリは成長しました。
ナデシコCという強力な新型艦まで登場しています。
さらに1999年にはドリームキャストで『機動戦艦ナデシコ NADESICO THE MISSION』が発売され、劇場版後の世界も描かれました。
それでもアニメの続編は制作されませんでした。
『ナデシコ』には続編構想が存在していましたが、その後さまざまな事情によって実現には至りませんでした。
ネット上ではいろいろな理由が語られていますが、具体的な事情について公式に明らかになっていない部分も多いため、憶測だけで断定するのは避けたいところです。
少なくとも、
「人気がなかったから続きを作らなかった」
という単純な話ではなさそうです。
その結果、劇場版のラストが非常に長い間「アニメ版ナデシコの最後」になってしまいました。
そして2026年、『ナデシコ』30周年企画が始動
そんな『機動戦艦ナデシコ』が2026年、TV放送30周年を迎えます。
30周年公式サイトや公式Xが開設され、記念企画がスタートしました。
さらに30周年記念PVも公開され、さまざまなイベントや記念企画も動き始めています。
ただし、現時点では、
新作TVアニメ・劇場版続編・リメイクなどは正式に発表されていません。
ここは期待と事実を分けて考えておきたいところです。
30周年だからといって、必ず新作が制作されるとは限りません。
それでも、これだけ長い時間が経った今、公式が改めて『ナデシコ』を盛り上げてくれていることは嬉しいものです。
だったら少しくらい、
「もしかしたら……」
と期待してもいいのではないでしょうか。
新作で見たいのは「新しい戦争」だけではありません
もちろん新型ナデシコの戦闘は見てみたいです。
ナデシコC、あるいは新型のナデシコDが、現代の映像技術で圧倒的な性能を見せつける艦隊戦。
新型エステバリス。
そしてブラックサレナ。
想像するだけでもワクワクします。
しかし、それ以上に見たいものがあります。
アキトの物語の結末です。
劇場版でアキトはユリカを救いました。
今度はユリカやルリたちが、アキトを救う番なのではないでしょうか。
傷ついたアキトが少しずつ以前の自分を取り戻していく。
ラピスも一緒にナデシコへ帰ってくる。
そして最後には、アキトがユリカのところへ帰る。
そんな物語を見てみたいと思います。
最後にアキトが料理を作れたなら……
もし本当に完結編が制作されるのであれば、個人的に見てみたいラストがあります。
すべての戦いが終わった後。
アキトが厨房に立っています。
昔のように料理を作っています。
そこにはユリカ、ルリ、ラピス、そしてナデシコの仲間たちがいます。
アキトが完成した料理を一口味見します。
そして、ほんの少し驚いたような表情を見せて――。
「……味がする」
もしそんな終わり方をされたら、当時から見ていたファンとしては、かなり胸にくるものがあるのではないでしょうか。
30年経っても『機動戦艦ナデシコ』の続編を待ってしまうのは、巨大ロボットや戦艦が格好いいからだけではありません。
劇場版で止まってしまったアキトの物語を、
今度こそ幸せな場所まで見届けたい。
そう思っているファンも多いのではないでしょうか。
『機動戦艦ナデシコ』30周年。
そろそろ、アキトをユリカのところへ帰してあげてほしい。
そして願わくば――。
新型ナデシコの相転移砲も、一発くらい盛大に撃ってほしいですね。

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