映画『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』を観て、気になったのが美東美織の「特異点」と、梓川咲太の「観測者」という立場です。
なぜ美織の問題が解決しても、世界の異変は終わらなかったのか。美織が別の世界へ移ったら、そこにいる美織と二人にならないのか。
今回は、少し難しいこの関係を「ノートと栞」に例えて整理します。『ひぐらしのなく頃に』『シュタインズ・ゲート』『リゼロ』『東京リベンジャーズ』との共通点と違いも考えてみました。
※青ブタ完結編・原作14、15巻のネタバレを含みます。他作品も人物の能力や世界の仕組みに触れるため、未視聴の方は比較の章にご注意ください。
※作中人物による説明と、それを理解するための例え・個人の考察を区別しています。例えは身体や移動の仕組みを確定するものではありません。
過去の物語は、青ブタシリーズのおさらい記事で振り返れます。
最初に整理したい「特異点」と「観測者」の違い
美織と咲太は、どちらも異変に深く関わりますが、同じ性質を持つわけではありません。
別世界の咲太の説明を整理すると、次のようになります。
| 人物 | 注目する性質 |
|---|---|
| 美東美織=特異点 | 複数の可能性の世界を通じて、同じ記憶や経験を持つ同一の存在と考えられている |
| 梓川咲太=観測者 | 美織を観測し、彼女を通じて別の可能性の世界まで観測することが、現実の異変に関わる |
美織の特殊さは、単に「別世界へ行ける」ことだけではありません。世界をまたいでも、同じ美織としてのつながりがある点です。
咲太も、異変を外から見ているだけの人物ではありません。彼の観測自体が、別の可能性と今の現実との関係を変えてしまいます。
ただし、これは作中で示される説明の整理です。二人が世界の仕組みをすべて知っていたり、自由自在に操れたりするという意味ではありません。
ノートと一本の栞に例えるとどうなる?
ノートごとに、違う可能性の物語がある
別の可能性の世界を、それぞれ内容が違うノートだと考えてみます。
- ノートAには、咲太が過ごしてきた日常。
- ノートBには、双葉と国見が付き合っている日常。
- ノートCには、かえでが別の人生を歩んでいる日常。
これは、違いを説明するために一部を取り出した例です。実際の世界が、この三つに分かれるという意味ではありません。
それぞれのノートでは、その世界の人たちが自分の人生を過ごしています。
美織は、ノートをまたぐ一本の特別な栞
ここで美織を、複数のノートにまたがる一本の特別な栞だと想像してください。
ノートごとに別々の栞を置くのではなく、一本が何冊ものノートとつながっています。
この例えで表したいのは、「各世界に独立した美織がいる」と考えるより、世界をまたいで同じ存在だと捉える点です。
栞が何冊にもかかっているからといって、その本数が増えるわけではない。そこが、今回の疑問を考える手がかりになります。
咲太の観測によって、今のノートに固定される
別世界の咲太の説明では、観測によって美織が咲太の世界に固定されることも重要です。
栞の例えなら、いくつものノートにまたがる栞を、咲太がノートAのところで見つけて、その位置に留めてしまうイメージです。
ただし、別のノートとのつながりまで消えるわけではありません。
その栞を通じて咲太が別の物語を読み、ノートBやCの内容が、ノートAの物語にも入り込んでしまう。こう考えると、二人が関わることで異変が起こる関係をイメージしやすくなります。

※これは関係を理解するための模式的な例えです。咲太が意図的にページを切り貼りしているわけでも、美織が好きな移動先を自由に選べると示しているわけでもありません。
なぜ霧島透子の問題が解決しても、世界は戻らない?
霧島透子をめぐる問題に区切りがついても、咲太が知る元の日常は戻りませんでした。
ここは、解決すべき問題を二つに分けると整理しやすくなります。
| 問題 | 整理のポイント |
|---|---|
| 霧島透子をめぐる問題 | 美織の親友への思いと、歌手の正体に関わる |
| 別の可能性が入り込む問題 | 美織の特殊な性質と、咲太の観測との関係に及ぶ |
栞の例えに戻ると、ひとつの物語に決着がついても、別のノートの内容が入り込む状態まで解消されたとは限りません。
だから美織の気持ちだけを見ても、異変の説明は終わらない。咲太がどう観測しているかまで問われる展開だったと理解しています。
別世界へ行ったら、美織は二人になる?
普通の人物が別世界の自分を訪ねる話なら、「移動してきた自分」と「もともといた自分」で二人になる、と想像できます。
しかし、美織の場合は、その前提が違います。
作中の説明に沿えば、世界をまたいで同じ記憶や経験を持つ存在と考えられているからです。栞の例えでも、別々の栞を一冊に集める話にはしていません。
そのため、自分は「独立した二人の美織が出会う移動として考えるのは、適切ではなさそう」と受け止めています。
ただし、これで身体の扱いまで解明できたわけではありません。
移動時に身体がどうなるのか、意識と身体がどのように対応するのかまで、「同じ存在」という説明だけで埋めることはできません。
「二人が合体する」「片方を消す」といったルールを追加するより、説明されている同一性と、確認できない移動の細部を分けるほうがよいと思います。
美織と咲太の関係を原作でも読み返したい方は、最終巻『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』をどうぞ。
他のアニメキャラも「特異点」になる?
別世界や時間のやり直しを扱う作品には、周囲と違う経験を持つキャラクターが登場します。
ただ、青ブタの「特異点」を、ほかの作品にも共通する能力名として使うことはできません。
比較するときは、何が似ているのかを分けるとわかりやすくなります。
| 作品・人物 | 比較する特徴 | 青ブタと重ねるなら |
|---|---|---|
| ひぐらし・古手梨花 | 別の世界での経験を記憶し、運命から抜け出そうとする | 美織の旅を想像する手がかり |
| シュタインズ・ゲート・岡部倫太郎 | 世界線が変わっても、変化前の記憶を保つ | 咲太が周囲との食い違いを認識する立場 |
| リゼロ・ナツキ・スバル | 死をきっかけに時間を戻り、経験を次の行動に生かす | やり直し前の経験を知る側面 |
| 東京リベンジャーズ・花垣武道 | 過去へのタイムリープによって未来を変えようとする | 過去への介入と未来の変化という別の仕組み |
ここからの比較は、設定が同じという説明ではなく、理解を助けるための個人的な見方です。
美織の旅に重なるのは『ひぐらし』の梨花
梨花は、別の世界での経験を記憶しながら、繰り返される運命から抜け出そうとする人物です。
美織が別の可能性へ向かう姿を考えると、「今とは違う結末のある世界を求める」という目的の面で、梨花が近く感じられます。
ただし、梨花が世界を移る条件や、力の由来は美織とは違います。梨花にも青ブタと同じ「世界をまたいで同一の存在」という仕組みがある、とまでは言えません。
似ているのは、まず旅の目的や経験の引き継ぎ方です。
咲太の立場を考えるなら『シュタゲ』の岡部
岡部には、世界線が変わっても以前の記憶を保持する「リーディング・シュタイナー」があります。
周囲の人には当たり前の現実でも、自分の記憶とは違っている。この食い違いを認識する点は、今回の咲太を考える手がかりになります。
ただし、「変化を覚えていること」と「観測が現実に影響すること」は別です。
岡部が記憶を保つ仕組みを、そのまま咲太の観測者の説明に置き換えることはできません。
『リゼロ』のスバルは、時間のやり直しが軸
スバルの「死に戻り」は、死をきっかけに以前の時点へ戻り、経験を次の行動に生かす能力です。
そのため、自分だけがやり直す前の出来事を知っているという点に共通性を感じます。
ただ、「時間が戻ること」と「別の可能性の世界へ移動すること」は、同じとは限りません。死に戻りの描写だけを根拠に、美織と同じ特異点だと分類するのは避けたいところです。
『東リベ』のタケミチは、過去を変えて未来へ働きかける
タケミチは過去へタイムリープし、大切な人を救うために行動します。
こちらは、過去への行動が未来にどう影響するかという仕組みで考えるほうが自然です。
別の可能性を知る人物という共通点はあっても、複数の世界にまたがる美織と同じ性質とは言えません。
比べると見えてくる、美織ならではの特殊さ
ほかの作品と比べると、世界や時間を越える人物にも、いくつもの違いがあります。
経験を覚えていること。過去へ戻れること。別の世界へ渡れること。そして、世界をまたいで同じ存在であること。
これらを一つの能力として扱わないことが、美織と咲太を整理するポイントだと思います。
美織を一本の栞として考える例えも、世界をまたぐ同一性と、咲太との関係をイメージするためのものです。身体の移動方法まで説明できる図ではありません。
鑑賞後に感じた「美織が二人になるのでは?」という疑問も、この違いを意識すると捉え方が変わりました。
自分としては、旅の目的を考えるなら梨花、現実との食い違いを認識する立場なら岡部を思い浮かべると、美織と咲太の違いを整理しやすく感じます。
別の可能性の世界の咲太も気になる方には、『青春ブタ野郎はドクターピッグの夢を見ない+』も。最終章と合わせて楽しめる短編集です。

コメント